センセイの鞄

新しい彼氏と付き合い始めて昨日で一ヶ月。「まだまだ先は長いよ」と言ってくれた言葉が、とても嬉しかった。

センセイの鞄

センセイの鞄

「ワタクシはいったいあと、どのくらい生きられるでしょう」
突然、センセイが聞いた。センセイと、目が合った。静かな目の色。
「ずっと、ずっとです」わたしは反射的に叫んだ。隣のベンチに座っている若い男女が驚いてふり向いた。鳩が何羽か、空中に舞い上がる。
「そうもいきませんでしょう」
「でも、ずっと、です」
センセイの右手が私の左手をとった。センセイの乾いたてのひらに、わたしのてのひらを包むようにする。         (帯掲載の本文より)

部屋での作業の合間に、ちょびっとだけページをめくってみた。これは泣いてしまうかもしれない。夜に読もうと思ったけれども、夕方、近くのカフェへ行く時に持っていってしまった。予想していた涙は出なくてほっとした。
センセイの鞄を遺族からもらったこと、センセイが死んだこと、それで最後は閉じられるけれども、物語の大部分は、私とセンセイとが「正式なおつきあい」をするまで、に割かれている。「わたし」と「センセイ」のように、一緒に湯豆腐とかをつつきながらお酒を楽しめるような、そんなおつき合いをしていきたいなぁ。