豆腐屋の四季

読了。
独立して1年目。アルバイトとはいえ、自分の専門を生かした仕事に就いているのに、うまくいかないことが多く、自信を喪失しています。働くって難しい、お金を稼ぐって大変。そう思っているせいか、体が弱く、貧しいながらも、「労働」に対する姿勢がとても勉強になりました。
松下竜一歌人でも作家でもなく、「豆腐屋」であることにこだわっています。機械で作業をすれば楽であるはずなのに、松下竜一は、機械を嫌う。「機械が据わり労働の過程が楽になればなるほど、私は何かを失いつつある気がしてならないのだ」そうです。苦しみながら働くからこそ、素晴らしいのかもしれません。

労働とは労(いたずき)のことであり骨折りのことであったはずだ。苦しみに耐えることであったはずだ。だが機械はつぎつぎに労を省き苦を去ろうとしている。いいことではないか、すばらしいではないかと機械を礼賛するのみでいいのか。そうやって心身の労がなくなり苦への忍耐が薄れるとき、はたして私たち人間は何ひとつ失っていないのだろうか。機械はひそかに人間の本質から何かを奪い去っていないだろうか。人間の心情に機械の及ぼす影響は無視していいほど微少だろうか。