御書物同心日記

御書物同心日記 (講談社文庫)

御書物同心日記 (講談社文庫)

中学の時、同級生に「何かおもしろい本ないかなぁ」と聞いたら、「出久根達郎の本がおもしろい」と勧めてもらった。確か、この時はエッセイで、ということで聞いたような気もしたが、聞いておきながら実は今まで読んだことがなかった。今回、ダヴィンチの旬の本棚で紹介されていて、思い立って借りてみた。

家康は収集した書物を、江戸城南、富士見之亭なる場所に収めた。のちのそれは城内紅葉山に移され、紅葉山文庫と称された。三代将軍家光が御書物奉行を置き、御書物方同心という職掌をもうけ、彼らに文庫を監督保護させた。以来、火災にも遭わず、三百数十年、無事に維持され伝えられた。現在、文庫は宮内庁と内閣文庫に文置されているという。(本書「江戸城内の書物―あとがきにかえて」より)

長くなるので引用はこの程度にしておくが、本書は、御書物奉行の勤務日誌『幕府書物方日記』に取材されたもののようである。先日、とある文庫を訪れた際、「死んでも落とすな」と言って蔵から本を出して手渡して下さった。大切な蔵書に何かあれば、「死んでお詫びを」という訳にはいかないのである。将軍の御本とあらば、その配慮たるや。推して知るべし、である。
本書では、御書物方同心の跡継ぎとなった丈太郎が出会う事件が描かれている。「本好き」「幽霊」という連想だろうか。読み進めていくうちに、梨木香歩の『家守綺譚』を思い出した。一年前に図書館で借りて、期限に追われながら読んだので、あまり覚えていない。文庫本で入手したので、またじっくりと読み返してみたい本である。
『御書物同心日記』はシリーズもののようである。おそらく第二弾であろう「秘画」と、第三弾の「虫姫」も早速予約してみた。「本」に興味のある「今」だからこそ、楽しく読めたのだろう。この出会いを大切にしていきたいものだ。