ナルニア国物語

自分に空想癖があることは重々承知している。例えば人が話をしている最中。話は聞いてるけれども、その端から色々なことを思い浮かべてしまう。「もし〜が…だったら。なーんちゃってね。フフ」そんなふうに頭の中では非現実的な話が展開されるわけであるが、あまりにも突拍子が無いので人には言わないことにしている。

ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫)

ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫)

小さい頃からあった話なはずなのに、「『ロード・オブ・ザ・リング』に続くファンタジー」と銘打って紹介されて初めて知った。『指輪物語』は原作が気になりつつも、結局は映画のみで済ませてしまったので、今度こそ原作を読んでから映画を見ようと意気込んでいた。
ライオンと魔女」は昨年のうちに読んでしまったので、原作から得た感覚は相当抜けてしまっていた。しかし、読後のリアルな感覚がなくとも、印象は残ってしまっていたので、結果として原作は原作、映画は映画と別々なものとして楽しむことができたが、やはり「印象」としては異なるものを受けた。
見た目は原作からの(といっても絵本ではないので、挿絵のなのだが)イメージを壊されることは殆どなかった。そこはさすがディズニーである。ただストーリーが少し単純化されていて、登場人物の内面描写が乏しいように思われた。最初にナルニア国へ訪れた末っ子ルーシーが、洋服ダンスの奥にそんな世界があるワケがない、と兄弟たちにバカにされた心中の悔しさは伝わってきたが、2番目の兄エドマンドの複雑な気持ちはどうなのだろうか。「翻訳」「児童文学」であっても、原作の方からは、エドマンドを裏切りへと走らせるに足る意義付けが描かれていたように思われるのだが。
単純だから分かりやすい、ということは確かである。原作を読んだ目から映画を見て、映画はうまくはしょってあるなぁ、というのが素直な感想である。原作を読んでいて冗漫な部分が無かったとは言わない。ただ、だからといって切り捨てた部分が余計なものだったとも思えない。「もし、私がナルニア国物語の脚本家だったら…。なーんちゃってね。フフ。」頭の中で何を思おうと、それは私の自由なのである。